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8. 量産移管とは:試作から量産へ移行する手続き

量産移管とは

幾度かの試作評価・検証および定められた信頼性試験を合格すること(機能部品(モジュール)ではユーザー承認の取得をしていることも条件の一つ)で試作品の問題点が無くなり設計が完了したということが関係部門合議の上、最終承認者によって認められた後、いよいよ大量生産が出来る体制に進める為に、開発設計部門から生産部門へ、大量生産が可能な製品として業務移管することを意味します。

この量産移管で回路設計者が果たすべき役割として、これまでの設計設備から量産設備に変更した場合にでも、製品の組み立てや検査で問題が生じないように整っているかを十分に検証する必要があります。

数万個から数百万個も同一の機能・性能を有した製品を大量生産をするためには、いくら特別な設計設備を使用した上で数個レベルの試作品評価で問題が無かったとしても、量産設備での製造や検査で許容範囲以上の不良品が発生するような状態では、量産の環境が整っていない事となり、原則、製品として製造することはできません。

量産移管に際しては、量産設備を使用し、ある一定規模の台数を生産する量産試作を実施して、大量生産時における最終的な問題点を洗い出します。
基本的には、量産設備の設計自体は生産技術部門(設備部門)が主務者であり回路設計者の担当外となりますが、製品の細部の特徴まで熟知している製品設計者(≒回路設計者)が量産設備の設計に関しても率先して助言する必要があると言えます。

量産時の問題を最小化するためには、設計設備と量産設備の設備相関を注意深く洗い出すことです。安定化電源の電流容量は十分か、電圧変動や電源ノイズの大小は問題無いか、設備の接地の取り具合は十分にできているか、無線ものであれば外来電波の影響は無いか、製品のコントロールタイミングは正しくなっているか、製品との電気的接続は不安定になっていないか、などなど、設計設備で出来たノウハウを量産設備に再現出来るように、あわてずチェックリスト的に網羅して不具合の可能性となる部分を排除していきましょう。

量産移管迄には、試作品が機能的な問題点を無くし、各種規格・法規制(compliance test)に適合し、定められた基準の信頼性試験(reliability test)合格する必要があるなど、大量生産までの道のりはそれほど簡単なことではないですが関係者と協力の上、一致団結して邁進していきましょう。