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2の1. 回路設計 をするために回路図を読む : はたして回路図記号が読めるかな? 回路定数が読めるかな?

回路設計者は電子回路を図面として作図する必要がありますので、まずは回路図記号が読めないとお手上げですね。

電子部品には、抵抗、コンデンサ、コイル(インダクタ)、ダイオードトランジスタなど多くの種類があります。
簡単な電子部品である抵抗一つを取り上げても、固定抵抗と可変抵抗では記号が違います。その他にも例えば、ダイオードであれば、汎用ダイオード、ツェナーダイオード発光ダイオードでは記号が異なりますし、トランジスタであれば、NPN型、PNP型、NチャンネルFET、PチャンネルFETなど多くの種類があり全て回路図記号は異なります。
日常の仕事では、全ての部品を使用するような回路設計を行うことはあまり無いと思いますが、一度、回路図記号一覧表を確認しておいた方が良いでしょう。

参考:CQ出版 トランジスタ技術https://toragi.cqpub.co.jp/Portals/0/backnumber/2007/05/furoku/p047-065.pdf

回路定数(かいろじょうすう)は読めますか?
回路定数とは電子回路や電気回路を構成する部品の値です。抵抗器であれば、抵抗値(Ω)、コンデンサであればキャパシタンス値(F)、コイルであればインダクタンス値(H)の事です。

ここでは、各設計回路分野毎によく取り扱う単位が異なりますのでなれるようにしましょう。
例えばコンデンサであれば、高周波回路系では、pF(ピコファラッド)単位をよく使いますし、電源系回路であれば、uF(マイクロファラッド)が良く使われます。

実務では「定数検討」などの呼び方で、同じ箇所の部品について複数の異なる定数に変更して最適値を決定します。例えば、計算上で10pFのコンデンサで設計した場合、実際のプリント基板上ではその前後の定数である8pFや12pFなどに変更して性能がどう変化するかを確認する作業を行い、実機での最適定数を決める必要があります。
なぜならば、設計した回路の実際の基板上での最適値はコンピュータシミュレーションのみで決定する事が難しい回路もある為、この様に実機での定数変更を行い、実験しながら最適定数を決定することをカットアンドトライと言います。この時、定数は計算上の前後一つの定数だけではなく、ある程度の幅をもった範囲で確認し、部品ばらつき(部品の個体差)による影響や、温度ばらつき(しばしば温度によって回路定数は変動します)などに対する設計余裕度も同時に確認します。
近年ではシミュレーションの精度も上がっていますが、カットアンドトライでの検討が無くなることはないと思います。

ここで、自身の実力がいかほどなのか、試しのこのトラ技SPECIALを読んで理解できるか挑戦してみてください!

さて、最近はリード線付きの抵抗を使用することは減ってきており、抵抗器に線で印刷されている定数を表すカラーコードを読む機会はあまりありません。
また、表面実装部品(チップ部品)についてもサイズが小型化されており部品表面にも定数の記載がなくなってきました。しかしながら、抵抗値や、キャパシタ値などの部品定数を読むことは、回路図を作成する際には必要であり、基本中の基本スキルですので、しっかりと読めるようになりましょう。

例えば、チップ抵抗の表面に「103」と印字されているものは「10X10^3 Ω=10kΩ」となります。
回路図面上でも10kΩを103Ωなどで記載する場合もありますので間違えて103Ω(ひゃくさんおーむ)と勘違いしないようにご注意ください。

実際の抵抗器の定数は無限にあるものでは無くて、「24系列」や「12系列」などのある決まったステップで存在します。一度、ネットでも書籍でも良いので「系列」について調べてみてください。コンデンサやインダクタを含めて小さな値から大きな値までどの様な表記になっているか、「※※系列」の意味と合わせて確認しておきましょう。


出典:トランジスタ技術より https://toragi.cqpub.co.jp/Portals/0/backnumber/2007/05/furoku/p047-065.pdf

自身の担当分野の回路図を2,3種類について見てみてはいかがでしょうか?
各分野毎に見るとそれほど多くの回路記号は出てこないはずです。どちらかというと現在の回路で使用されている部品はトランジスタで設計された回路よりもICの数の方が多いのではないでしょうか?
そう、良くも悪くも、しばしば言われる通りで、このご時世、ICが肝なのですよ!